秋に熟して割れたツバキの実を拾ったけれど、椿の実の使い道がわからない……という方は多いのではないでしょうか。椿の実の中のタネは、髪や料理に使われる椿油の原料になるほか、まけば苗を育てることもできます。この記事では、椿の実の使い道と食べられるかどうか、椿油ができるまでの工程、種まきの時期、熟す時期と保存方法を表でわかりやすく解説します。
この記事の結論(3行まとめ)
① 椿の実の使い道は、タネを搾った椿油(料理・髪・精密機械の潤滑剤)と、タネまきで苗を育てることが中心
② 実やタネをそのまま食べる習慣は一般的ではない。食用にするのは搾った椿油。搾りかすにはサポニンが含まれ、水辺に流すと魚に害がある
③ 実は9〜10月ごろに熟す。タネの油は8月下旬から充実し、油含有率は35%前後。椿油は遮光・25℃以下で保存
椿の実の使い道一覧



ツバキ(ヤブツバキ)の実の中には、黒褐色の硬いタネが入っています。使い道の中心はこのタネです。主な使い道を表にまとめました。
| 使い道 | 使う部分 | ポイント |
|---|---|---|
| 椿油(料理) | タネを搾った油 | 料理用の食用油として使われる |
| 椿油(髪・肌) | タネを搾った油 | 昔から頭髪用の油として使われてきた |
| 椿油(機械) | タネを搾った油 | 精密機械の潤滑剤にも使われる |
| タネまき | とり出したタネ | 10〜11月ごろにまいて苗を育てる。花が咲くまでは数年かかる |
| 椿油かす | 搾ったあとのかす | 特殊肥料として流通。サポニンを含み魚毒性があるので水路・河川に流さない |
椿の実は食べられる?
椿の実やタネを、そのまま食べる習慣は一般的ではありません。食用として使われているのは、タネを搾って作る椿油です。椿油は料理にも使われ、食用の椿油も市販されています。
タネを搾ったあとに残る「椿油かす」にはサポニンが含まれています。サポニンには魚毒性があり、水路や河川に流れ出ると魚介類に影響を与えるおそれがあります。拾った実やタネを口にしたり、かすを水辺に捨てたりしないようにしましょう。
椿の実が熟す時期
ツバキの実は4月中旬から大きくなりはじめ、7月下旬に肥大が終わります。そのあと8月下旬から、タネの中に油がたまっていきます。実を早く採ると、タネの油の含有率は低くなります。
実は9〜10月ごろに熟し、割れると中から黒褐色のタネが3〜5個ほど出てきます。タネの油含有率は35%前後で、タネが重いほど搾れる油も多くなります。
| 時期 | 実の様子 |
|---|---|
| 4月中旬〜7月下旬 | 実が大きくなる |
| 8月下旬〜 | タネの中に油がたまりはじめる |
| 9〜10月ごろ | 実が熟して割れ、黒褐色のタネが3〜5個ほど出てくる |
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 植物 | ツバキ(ヤブツバキ)/ツバキ科ツバキ属 |
| 花期 | 冬〜春 |
| 実が熟す時期 | 9〜10月ごろ(地域や年により前後) |
| タネの数 | 1つの実に3〜5個ほど |
| タネの油含有率 | 35%前後 |
| おもな利用 | 椿油、タネまき |
椿油ができるまで

椿油は、実からとり出したタネを乾かし、砕いて搾って作ります。一般的な工程は次のとおりです。
- STEP1実を干す
収穫した実を1週間ほど干し、皮が乾いて裂けたら中のタネをとり出します。
- STEP2タネを乾かす
タネを1週間ほど天日に干して、余分な水分を除きます。
- STEP3砕いて加熱する
タネを砕いて蒸すか、砕かずに温めます。
- STEP4搾る
搾油の道具で搾ります。
- STEP5こす
布や和紙でこして、ごみなどを取り除きます。
- STEP6精製する
搾った原油を精製すると、油の安定性や品質が上がります。
タネの油含有率は35%前後で、ゴマ(約50%)やナタネ(40〜45%)より少なめです。家庭で手作業をしても、とれる油の量はわずかです。手軽に使いたいときは、市販の椿油を選ぶとよいでしょう。
椿油の成分(オレイン酸が約86%)
長崎県は令和3年の椿油生産量が33.7kLで全国1位(全国の43%)です。そのほとんどが、五島列島のヤブツバキ林で採集したタネから作られています。椿油の脂肪酸組成は次のとおりです。
| 脂肪酸 | 範囲(最小〜最大) | 平均 |
|---|---|---|
| オレイン酸 | 83.6〜87.9% | 85.6% |
| パルミチン酸 | 8.2〜9.5% | 8.8% |
| ステアリン酸 | 0.7〜3.0% | 1.8% |
| リノール酸 | 3.1〜4.4% | 3.4% |
椿油の脂肪酸の約86%はオレイン酸です。椿油の黄色い色素は、ルテインとゼアキサンチンであることもわかっています。
椿油・タネの上手な保存方法
椿油は水分・光・高温によって劣化しやすい油です。
| 条件 | わかっていること |
|---|---|
| 水分 | 水分を含むと約120日以降に酸価(劣化の指標)が上がる。脱水・脱酸で精製すると360日後も上がらない |
| 光・温度 | 遮光しない場合や40℃で保存すると、30日以降に過酸化物価が上がる |
| におい | 40℃・光が当たる条件で、においが強くなる |
| タネ | 外気と同じ環境で保存すると、梅雨以降に酸価が上がる |
- STEP1水分を入れない
容器に水が入らないようにし、ふたをしっかり閉めます。
- STEP2光を避ける
遮光びんに入れるか、日の当たらない場所に置きます。
- STEP3涼しい場所で
25℃以下で保存すると劣化を抑えられます。
- STEP4タネは早めに搾油
タネを外気と同じ環境で保存する場合は、梅雨前までに搾油します。
椿油を手軽に試したいときは、市販の純椿油が便利です。開封後はふたをしっかり閉め、光と高温を避けて保管しましょう。
椿の種まきで苗を育てる
拾ったタネをまいて、ツバキの苗を育てることもできます。ツバキは実生(タネまき)とさし木で増やせます。
| 方法 | 時期 | ポイント |
|---|---|---|
| タネまき | 10〜11月ごろ | 熟した実からとり出したタネをまく。開花までは3〜4年ほどかかった例がある |
| さし木 | 6月下旬〜8月 | 春から伸びた枝を10〜20cmに切り、水あげしてから清潔な土にさす |
| とり木 | 3〜6月 | 枝の皮を幅3cmほどはぎ、水ゴケで包む。1〜3か月後に発根を見て切り離す |
秋に採ったタネの殻にヤスリなどで傷をつけてからまく方法もあります。タネから育てる場合は、花が咲くまで気長に育てましょう。
ツバキを育ててタネを採るには
ツバキは日当たりのよい場所から日陰まで栽培できます。植えつけの適期は3月中旬〜4月、または9月中旬〜10月中旬です。冬の乾いた北風は、つぼみが落ちたり枝が枯れ込んだりする原因になるので、風の当たりにくい場所を選びましょう。
ツバキにはチャドクガの幼虫がつきます。毛が皮膚に触れると、強いかゆみのある発疹が出ます。幼虫が出るのは5〜6月と8〜9月の年2回です。実を拾ったり枝に触れたりするときは、手袋をして肌の露出を抑えましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 椿の実は食べられますか?
A. 実やタネをそのまま食べる習慣は一般的ではありません。食用として使われるのは、タネを搾った椿油です。
Q. 椿油かすでジャンボタニシを駆除できますか?
A. できません。椿油かすは農薬として登録されていないため、ジャンボタニシなどの駆除を目的に使うと農薬取締法違反になります。肥料として使う場合も、サポニンが水路や河川に流れ出ないよう注意が必要です。
Q. 茶の実(チャノキの実)とは違うもの?
A. チャノキ(Camellia sinensis)も同じツバキ属ですが、別の植物です。椿油は主にヤブツバキのタネから作られます。
Q. 椿油はどのくらい日持ちしますか?
A. 保存状態で大きく変わります。精製して水分を除き、遮光して25℃以下で保存すると劣化を抑えられます。
まとめ
- 椿の実の使い道は、タネを搾った椿油(料理・髪・潤滑剤)とタネまきが中心
- 実やタネをそのまま食べる習慣は一般的ではない。食用は椿油
- 椿油かすはサポニンを含み魚毒性がある。水辺に流さない・害虫駆除に使わない
- 実は9〜10月ごろに熟す。タネの油は8月下旬から充実し、含有率は35%前後
- 椿油の脂肪酸の約86%はオレイン酸。遮光・25℃以下で保存
- タネは10〜11月ごろにまく。さし木は6月下旬〜8月
秋に色づく実の植物では、コムラサキの記事もあわせてご覧ください。


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